症例1:開放骨折

Gustilo Type3C 開放骨折に対するVAC療法

開放骨折においては、初期治療、手術時に開放創の被覆を意識するが故に軟部組織のデブリードマンが不十分となることがあり、それが感染の一因となっていました。また、多発外傷患者においてはDCO(damage control orthopeadics)を選択せざるを得ない状況も多く、内固定まで開放創として管理を余儀なくされていた。それは骨、軟部組織が開放している状況において、既存の創傷被覆材では管理が十分でなかったという背景がありました。当科ではVAC療法は上記のような開放創の管理における有効な手段として積極的にVAC療法を導入しております。

症例

【診断名】腸間膜損傷、右大腿骨骨折、右膝窩動脈損傷

来院時から出血性ショック状態で、開腹止血術を施行しました。右大腿骨骨折、右膝窩動脈損傷においては膝窩動脈バイパス術を施行し、大腿骨骨折においては創外固定術を選択し、開放創の管理にVACを用いました。

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【図1】来院時の右膝窩開放創の写真(膝窩動脈を同定し、テーピング)

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【図2】右大腿側面レントゲン写真

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【図3】創外固定後の右膝窩開放創

軟部組織の挫滅は高度であったため、温存不可能な皮膚、軟部組織を切除しました。ここが以前までの治療方針との違いです。骨折部をopenにしないため、何としてでも閉創にこだわっていました。写真のように思い切ってデブリードマンを行っています。

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【図4】VAC療法導入後の創部

創外固定術後、開放創に対してVAC療法を開始しました。以下に開放創管理の経過を示します。

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横軸が時間軸です。アスタリスク(*)はVACを交換した日を示しています。VAC療法はグラニュフォームで創部を覆うがために、直視下で創部を観察できないといったデメリットがあります。当科においては、非交換日においても、血液検査成績や、創部の周辺の発赤、熱感などの観察を心がけております。肉芽形成などを考慮して、導入後2週間までは、週に1回のVAC交換、以後は週に2回交換する方針としております。ただし前述の如く、感染が疑われる際にはこの限りではありません。

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【図5】VAC開始後20日目の開放創

肉芽の色調は良好で、周囲健常組織との凹凸も消失しています。

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【図6】VAC開始後23日目に骨接合術ならびに分層植皮術時の創部

骨接合術は、逆行性に髄内釘を挿入しました。大きな解放創の近傍から髄内釘を挿入すること自体以前ならためらわれたことです。術後に解放創が感染をおこせば、異物にも感染が波及し抜去を余儀なくされます。VAC療法が感染症をおこしにくいために選択できた術式です。開放創に対しては、3倍のmesh skin graftで植皮しました。当科では植皮術のgraftの被覆においてもVACを用いております。

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【図7】VAC開始後30日目(植皮術後7日目)の創部

植皮は100%生着しており、mesh間も不良肉芽が発生することなくflatな状態を維持しています。これは被覆にVACを用いる長所といえます。また陰圧が創面に均一にかかることにより、創面が不整であっても、従来のtie over dressingと比較しても良好な生着を得られることも利点であるといえます。この時点でVACを終了としています。

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【図8】第40病日上皮化完了後の創部

開放骨折における開放創のVAC療法について多数の報告がされています。後ろ向き研究であるものの、その有用性を挙げているものが大勢です。我々も開放骨折に対して積極的にVAC療法を導入していますが、その効果を強く実感しております。