グラム染色とは

救命センターにおける感染症診療

 重症患者を対象とする救命センターでは、初期治療の失敗が患者の死に直結することから、重症感染症患者に対して、幅広い細菌に対して効果のある広域抗生剤を頻繁に使用します。
 一方で、近年、世界的な拡散および蔓延が大きな問題となっている多剤耐性菌の発生には、不適切な抗生剤使用が関与することが知られています。そのため、安易に広域抗生剤を用いるのではなく、抗生剤を適正に使用することがWHOより提言されています。つまり、多くの救命センターは、感染症診療において、広域抗生剤で安全に初期治療を行うことと、広域抗生剤使用によって多剤耐性菌の拡散・萬栄してしまうことのジレンマに陥っており、安全に広域抗生剤の使用を制限する方法が求められています。

グラム染色を用いた抗生剤治療戦略

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 グラム染色は、感染源から採取した検体の細菌を染色し、感染の有無や起炎菌を予想するために行う検査です。簡便に施行でき、かつ安価なことが利点に挙げられます。当センターは2012年に救命センター内に顕微鏡を購入し、感染症が疑われた症例に対して積極的にグラム染色を行うことを始めました。検体を採取してすぐにグラム染色を行うことができるため、数分で染色結果を得ることができ、抗生剤治療を遅らせることなく、起炎菌を想定した診療を行うことが可能となりました。
 我々の研究グループは救命センターにおける頻度の高い感染症である人工呼吸器関連肺炎に対して、これまで施行してきたグラム染色結果を収集し、グラム染色結果を基にした抗生剤選択のアルゴリズムを構築しました。その結果、このアルゴリズムはガイドラインが推奨する抗生剤選択と比較して、起炎菌カバー率を低下させることなく、広域抗生剤の使用を制限できることを報告しました1。更に、このアルゴリズムを用いて実際に診療を行い、安全に広域抗生剤の使用を制限できることを確認しました(図1)。
 グラム染色は、簡便かつ安価な検査であることから、導入が比較的容易であり、世界的な問題となっている多剤耐性菌の蔓延を抑制する有用なツールになり得ると考えています。我々は、グラム染色を用いた抗生剤治療戦略の有用性を世界に発信するべく、更なる検討を予定しています。

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1.Yoshimura J, Kinoshita T, Yamakawa K, et al. Impact of Gram stain results on initial treatment selection in patients with ventilator-associated pneumonia: a retrospective analysis of two treatment algorithms. Crit Care.;2017;21:156.