開発の経緯

3SPiders(電子トリアージ支援システム)

img_3spiders_01.gifSmartphone supports patients and selects priority in disaster sites が3SPidersの由来で、救急診療科部長の藤見聡が命名しました。ロゴマークは、スマートフォン型のトリアージタグ、寸断された情報網をクモが巣をはりめぐらせるように修復していく様子、プロジェクト名の頭文字"3"をイメージしてDMAT隊員の西健太がデザインしました。

プロジェクト開始までのいきさつ

当院は大阪府の基幹災害拠点病院の重責を担っており、災害時には400名の傷病者を受け入れることを前提に施設、医療設備が整備されています。毎年2回の大量患者受け入れ訓練を行っていますが、たった50名程度の患者が短時間に押し寄せるといったシナリオですら、情報管理が思うように出来ません。実際に400名もの傷病者が押し寄せれば、DMATが掲げるような傷病者のコントロールは、現状では不可能と言わざるをえません。そこで、正確な情報を収集し、的確に情報を分析し、みなが情報を共有するための方策を模索してきました。その答えが3SPidersです。

プロジェクトのはじまり

昨年秋に発売されたガラパゴススマートフォンに注目しました。

  1. 携帯通信網がなくても、WiFi環境下で通信できる。
  2. 演算処理能力は、ノートパソコンに匹敵する。
  3. おサイフケータイ機能®(FeliCaチップ®)を搭載しており、ICタグとの間で情報のやり取りができる。
  4. 携帯性に極めてすぐれている。
  5. 爆発的勢いで普及している。

病院は自家発電装置を保有しており、想定外の直下型地震以外なら、電源は確保できます。必ずしも、紙ベースの情報管理に固執する必要はありません。サーバーとネットワーク設備を自家発電の電源に接続すれば、災害時でも無線LAN環境を維持することができ、災害用電子カルテを運用することは不可能ではありません。またスマートフォンを情報入力、閲覧用の端末とすれば、機動性は抜群です。傷病者のトリアージタグにICタグを付ければ、おサイフケータイ機能®を利用して、傷病者の識別が即座にでき、WiFi経由でサーバーとの情報のやり取りも容易です。スマートフォンで収集した情報をサーバーに集めれば、解析することは比較的容易です。スマートフォンの爆発的普及により情報端末を病院が備蓄せずとも、職員が保有する最新の機器を利用できるに違いありません。プロジェクトの青写真がこのようにして完成しました。さっそく調査を開始しましたが、おサイフケータイ機能®が付いているからといってICタグに情報をリード/ライトできるものではないことが判明し、プロジェクトも絵にかいた餅かとあきらめかけたその時、東京エレクトロニツクシステムズ社から朗報が飛び込みました。リード/ライトできるスマートフォンがとうとう見つかりました。プロジェクトが現実味を帯び、予算申請の書類を書き上げた翌日、くしくも東日本大震災がおこりました。DMAT隊員として現地で活動を行い痛感したことは、やはり患者情報の不足でした。

プロジェクトの現状

Phase Ⅰ

東京エレクトロニツクシステムズ(株)、東芝メディカルシステムズ(株)と共同でシステムの開発を進めています。2011年9月6日の当院における災害訓練で、3SPidersの第1回実証実験を行いました。92名の模擬傷病者を90分間で受け入れるというシナリオで訓練を行いました。3SPidersサーバーに、アクセスポイント18台を介して、スマートフォン55台、タブレットPC6台、ノートPC13台を接続して、情報収集、情報分析を行いました。院内という閉ざされた環境下では、3SPidersが十分に機能することが証明されました。

Phase Ⅱ

2012年1月19日に当院で行われる災害訓練に向けて、改良を続けました。スマートフォン用のアプリのデザインも視認性を向上させるために一新しました。またPhaseⅠでは、紙で運用してたレントゲン、CTのオーダー、薬剤のオーダーも電子化に成功しました。またDMAT活動を円滑に行うため、収集した情報からDMAT仕様の広域搬送カルテを印刷する機能も追加しました。

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2012年1月19日に行われたPhaseⅡ実証実験では、スマートフォン65台、タブレット端末7台、ノートPC13台が稼働しました。模擬傷病者100名に対し137名のスタッフが対応し、2時間の訓練で1201件のデータ登録が行われました。今回の訓練では、職員個人が所有するアンドロイド端末を含め計8機種が使用されました。今後ますますスマートフォンは普及するものと思われます。病院が端末を備蓄せずとも、個人が所有するスマートフォンを活用することで、常に最新の技術でシステム更新が可能になります。


プロジェクトの展望

2度の実証実験の結果をふまえ、さらに改良を加えて、2012年3月31日に3SPiders第1期システムが完成しました。

当院内のシステムに加えて、八尾SCUにもサーバーおよび3SPiders無線LAN環境が整備されました。さらにDMAT carで被災病院や現場救護所に持ち込むことを想定した可搬型3SPidersシステムも整備されました。また拠点間通信を行うため、当院、八尾SCU、大阪府庁医療対策課を光ファイバー(一部衛星通信)で接続しました。今後は大阪府下の全災害拠点病院への3SPiders導入、大阪府下の災害時傷病者管理ネットワークの構築を計画しています。


『おサイフケータイ』は株式会社NTTドコモの登録商標です
『Felica』はソニー株式会社の登録商標です

リンク先

東京エレクトロニツクシステムズ(株)
http://www.toshiba.co.jp/tecs/